5.奮闘
芝は不得手?...
ミヤシロブルボンは現在本賞金が1,570万円である。ということはダービー以後、古馬混合戦では1600万条件馬である。あと1勝すればオープン馬に返り咲きできる。このまま勝てなければ来年は900万下...いやそんな事を考えてはいけない。7月の夏競馬は福島から。競馬四季報夏号のミヤシロブルボンの欄には、ダービーかラジオたんぱ賞で復帰予定と書いてあった。ダービー出走後、順調であれば次走はラジオたんぱ賞が自然だ。ここで勝つか2着すればオープン馬となり秋までじっくり調整できる。案の定、ラジオたんぱ賞に登録してきた。今回は山田師も「期待している」とのコメントを出しているので筆者も期待したい。
ということでミヤシロブルボン撮影班は今回も出走。
1998年7月5日(第47回ラジオたんぱ賞G3:福島競馬場)
福島競馬場は初めてだ。福島駅からタクシーを使えばすぐに行けると聞いていたので余裕を持って午前11時頃に到着。街の中にあるこじんまりとした競馬場である。観客席、パドックのスペースがあまりないので窮屈な感じがする。中山、阪神のような狭い競馬場を思い浮かべればわかると思う。小回りコースの平坦なコースはミヤシロブルボンの主戦場であった水沢競馬場に似ているので戦い易いのではと思わせる。ところで、福島競馬場ではパドックで折り畳みの携帯椅子を使うと、係りの人に注意された。狭いパドックだからであろうか。今後行く人はご注意を。
当日はこの夏一番の暑さであった。フェーン現象で最高気温が34度超。日差しの中にいると脱水症状を起こしそうなくらい。パドックの最前列は日差しが強烈でちょっとの間も座って居られない。最前列を確保するため日陰と前列を行ったり来たりしていた。ご存知であろうが、人間高温の中に長時間いると眠くなってくるうえに体が疲労の固まりになる。夏の鈴鹿8時間耐久ロードレースの悪夢を思い出してしまった。幸い福島は、府中や中山のような席の取り合いがないこと(ローカルだから写真を撮る人が余りいない)に気付いてからはメインレース直前まで日陰ですごすことができた。それでも気温は空調の効いた室内とは雲泥の差であった。こんな暑さでミヤシロブルボンは大丈夫かなと、それだけが気がかりであった。
今日の出走メンバー
馬 馬 名 斥 人 騎手 体重 増減 1 トップナビゲーター 54 14 沢 450 0 2 アイアムザプリンス 56 9 柴田善 476 0 3 シービーエンドレス 55 8 牧田 456 +8 4 ビワタケヒデ 54 4 藤田 452 0 5 メイショウオウドウ 54 2 飯田 452 +2 6 イシノフルール 54 13 蝦名 456 +10 7 ファインバレイ 54 11 後藤 482 +12 8 ディヴァインライト 55 1 橋本広 466 +8 9 エイシンビンテージ 54 15 嶋田 492 +2 10 フィールドソラール 55 7 松本 474 +12 11 ミヤシロブルボン 55 12 大塚 462 -6 12 マイネルメッサー 55 10 吉田 430 0 13 トップパシフィック 55 5 田中勝 470 0 14 センターフレッシュ 55 3 角田 464 0 15 スターパス 54 6 安田康 456 -4 (芝1800m 天候:晴れ 馬場:良)
パドック。ミヤシロブルボンは11枠。ダービーの時のような入れ込みを押さえられるかがキーポイントだ。いつものように首を下げぎみで静かに出てきた。今日の一番人気はディヴァインライト、ミヤシロブルボンは12番人気?ちょっと見くびられすぎではないか。ダービー17着では仕方がないか、やっぱり。周回を重ねるごとに入れ込みがきつくなってきた。また、汗もかきはじめた。今日の暑さでは致し方ない。他の馬も軒並み汗をかいて滴がポタポタと落ちはじめた。そのなかで、ビワタケヒデだけは涼しい顔で周回している。汗もかいていない。こいつはやるよ。騎乗の合図がかかって全馬騎手騎乗。ミヤシロブルボン撮影班は脱兎の如く本馬場へ向う。
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パドック | スタート直後 |
レース。スタート後まるで良いところなし。なんと人気通りの12着。一瞬呆然とする他なかった。1着はビワタケヒデ。ウィナーズサークルでは藤田騎手と松田師が喜びのポーズで報道陣に向っている。グリーンチャンネルのトレセンレポートでいつも強気の松田師が今回はしごく弱気だったことが変に思い出されて仕方がなかった。
ともあれ、現実は12着。帰りの新幹線でヤケ酒をあおったのは言うまでもない。
う〜ん次に、期待しよう...
オープン馬へ向けて...
夏場は休養に当てるのか。ここで1勝してオープン馬として秋に望むのか。難しいところである。山田師は夏場1勝をあげさせる作戦に決めたようで、3週後の新潟の北陸ステークスに登録してきた。それもダートの準オープンクラスである。山田師も認めているように、ミヤシロブルボンは決して芝が苦手ではないと思う。しかし、悲しいかな切れるスピードがないため時計の掛かる馬場で力勝負が向いているようだ。やはり、ダートの方がよいのであろうか。
1998年7月26日(北陸ステークス:新潟競馬場)
今回は準オープンのダートである。走り慣れたダートである。距離も1,700mと手頃な距離である。ただし、4歳馬はミヤシロブルボン唯1頭だけ。初めての古馬との対戦である。歴戦のツワモノ達に混じってどのようなレースをするのか非常に楽しみである。それならミヤシロブルボン撮影班も出走しないわけにはいかない。
新潟競馬場。ここもまた初めての競馬場である。ミヤシロブルボンを応援してあちこちの競馬場を開拓させてもらっている。中央では中京と北海道を残すのみとなった。これからも新規開拓が増えそうである。新潟競馬場は豊栄市にあるので列車より車が便利だろうと今回は車にした。しかし東京からは遠い...ちなみに駐車場の料金はタダであった。撮影班は10時に到着したが、もう少し遅いと正門近くの駐車場は一杯で入れない恐れがあったので注意が必要。天候は晴れ。福島の時のような猛暑ではなかったので非常に楽であった。初めての競馬場なので先ずはコースと観客席を観察する。お馴染みの長い直線は追い込みに有利と思わせるが、今年は高速馬場で逃げ・先行がそのまま行ってしまうことが多いようだ。観客席は半分が新築、半分は古いまま。そのうち改築するのだろう。噂の1000mの直線コースと一緒に作るのかな。
今日の出走メンバー
馬 馬 名 性年 斥 人 騎手 体重 増減 1 サファリアーチスト 牡6 53 8 吉永 474 +8 2 ミナミノジャック 牡7 54 7 柴田善 460 +8 3 オースミジェット 牡5 57.5 1 蛯名 496 -2 4 ミヤシロブルボン 牡4 52 4 大塚 470 +8 5 ブルードリーム 牡8 54 12 沢 502 -4 6 ゲイリーマグナム 牡6 57 3 後藤 464 +2 7 ヒシワールド 牡7 54 11 小林久 470 -8 8 ヘッドライン 牡6 56 2 橋本広 546 +4 9 ミナミノテスコ 牡6 55 9 中館 476 -6 10 ラストヒット 牝6 51 10 柴田大 496 +4 11 キゼンチカラ 牡6 53 6 高山 492 +4 12 ビゼンハヤブサ 牡7 53 5 吉田 478 -2 (ダート1700m、天候:晴れ、馬場:良)
パドック。相変わらずの首を下げた歩様。パドックに出てきた直後は落ち着いている。体重も前走から+8で、成長を考えるとこれ位が丁度良いのではないかと思う。しかし周回を重ねるごとに汗をかきはじめるのも相変わらずである。今回は前走レコード勝ちしたユーワミラージュが除外になった。しかし、オースミジェット、ヘッドライン、ゲイリーマグナムという強い馬がそろっているので楽ではない。ミヤシロブルボンはこれらの馬に次いで4番人気である。
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パドック | 馬場入り |
馬場入り。落ち着いた様子でスムーズに返し馬にはいる。レーススタート。スタートからハナに立った。今回は逃げの作戦だ!内心、「えーっ!今までそんな戦法取ったことないのに、逃げて勝てるわけないよ」と思う。しかし、ミヤシロブルボンは果敢に逃げている。4コーナーを回ったところで案の定、ずるずると後退するか...と思ったが結構粘っている。結局3番とはちょっと離された4着に頑張った。古馬に混じって4着なら検討でしょう。よくやった。
:「ハナに行ったけどハミを取らずに遊び遊び走っていた。4角ではもう後続とは手応えが違っていた。ダートの適性は確認できたし、内容はあった」(大塚騎手談:競馬ブックより引用)
ダートで力の要る馬場なら結構やれるのではと思わせたレースであった。新潟まで来た甲斐があったというものだ。おみやげに柿の種を買う余裕まであった^^;
ダートに転向するの?
ダート適性を確認できたというコメントから、路線をダートに絞るのではと思うようになった。父親ミホノブルボンが菊花賞に2着とはいえ、それは故戸山師のハードトレーニングの賜物であり、産駒が長距離に向いているとは思えない。菊花賞よりはダート路線が妥当だろう。とすると、狙っているのは中山開催のユニコーンステークスかな。とはいえ、前走後、関越ステークスに登録するだろうということは予想できた。1週前時点では準オープンの天の川ステークスとダブル登録されていた。しかし週半ばに山田師は関越ステークスに出すつもりとのコメントを出していた。前走の内容が内容だけにミヤシロブルボン撮影班今回も出撃するほかないでしょう。
1998年8月16日(関越ステークス:新潟競馬場)
先々週から新潟地方は雨続きである。新潟市内では床上浸水で水浸しの様子。3週間前に車で新潟に行った時は関東地方が大雨で、関越トンネルを過ぎると新潟地方は快晴であった。ところが今回は逆で、新潟に入ったとたん大雨である。風は強いし、バケツをひっくり返したような大雨。愛車は14万kmを超えた11年物。大雨の中、高速道路で対向車の跳ねた水を浴びてリークを起こしてエンジンが止まった経験があるので冷や汗物なのである。恐怖の約2時間をなんとかやり過ごして新潟競馬場へ。雨は降り続いている。
思い出すのは水沢の東北3歳チャンピオンの時の不良馬場。雪解けで天気は曇りながら馬場はドロドロの不良であった。そこで1着。ということは...思わず、ニヤリとしてしまうのであった。天気は雨だけど、心は晴れている筆者であった。
今日の出走メンバー
馬 馬 名 性年 斥 人 騎手 体重 増減 1 ゲイリーマグナム 牡6 56 1 後藤 468 +4 2 ファンドリリョウマ 牡7 57 3 柴田善 474 -2 3 ユウセイ 牡6 55 11 柴田未 520 +20 4 ユーワミラージュ 牡6 56 2 中館 478 -2 5 グリーンスワード 牡6 56 9 木幡 490 0 6 パリスナポレオン 牡8 58 7 牧田 534 -3 7 プレミアムプリンス 牡7 56 8 武藤 536 0 8 ミヤシロブルボン 牡4 53 6 大塚 474 +4 9 リンガスエリート 牡5 56 4 吉田 480 +6 10 マルゼンシーズ 牡7 56 10 坂井 504 +6 11 エアリバティー 牝5 54 5 橋本広 454 +4 (ダート1700m、天候:雨、馬場:不良)
昼休みが過ぎる頃には雨脚が緩みはじめた。メインレースのパドック周回が始まる頃には大雨は止んで小雨。今日はミヤシロブルボン気が散っているのか、筆者の前を通るたびにちらちらとこちらを見ている。雨でパドック最前列の周りに人がいないので余計に目立つのかもしれない。「12月に会ったよね、覚えているかい?」なんてことを考えながら様子を観察。11番エアリバティーの入れ込みは並みではない。入れ込み過ぎである。時折立ち上がったりしながら、最後尾を他馬と離れて周回。最初にパドックに現れた森師も心配そう。エアリバティーの入れ込みがブルボンに影響しなければいいが。と思っているとだんだんブルボンの様子に落ち着きがなくなってきた。首を振ったり、はねる構えをしたり。そうこうしているうちに「止まれ」の合図が掛かる。今回は大塚騎手はパドックで騎乗しないようだ。全馬退場。馬場へ。
本馬場入場を待ち構える。1番から順に次々と馬が現われる。7番。8番ミヤシロブルボン。と待っていているが現れない。エアリバティーも現れない。何かあったのか?待つこと約2分。報道陣とカメラが一斉に馬場入りの出口を待ち構えているところに、まずミヤシロブルボンが現れて元気に走り出す。ほっとした。でも報道陣はミヤシロブルボンなんか見向きもしていない。次に出てくるエアリバティーに注目している。いささか腹が立つ。結局エアリバティーには馬場入り途中でも橋本広騎手は騎乗できず。ダートコースの入り口で騎乗した。返し馬はやったのかしら?ミヤシロブルボンに注目していたのでそこまでは見ていない。
この頃から再び雨がひどくなる。どんどん降れ降れ!不良馬場になったってミヤシロブルボンは平気だい。
レーススタート。今日は控える競馬だ。5番手あたりを追走する。3コーナーあたりからじわりと後ろに下がりはじめる。あれあれ?ミヤシロブルボンは不良馬場なんて問題にしないはずじゃあなかったのか。スピードが速くなってついていけない。いや4コーナーを回ってからが勝負さ。しかし、直線追い上げるも5着確保がよいところ。前の馬にはどんどん離される。先頭から5〜6馬身離されたようだ。
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ファンドリリョウマの5着 | 帰るのはいつも一番 |
後で考えた。ひょっとしてミヤシロブルボンは雨のレースは初めてでは。不良馬場の水沢では雨は降っていなかった。雨粒が空から1適でも降ってくるとやる気を無くす馬だっているそうだ。もしかして、ブルボンは雨が嫌いなのかもしれないな。まあ馬に聞いてみないと真偽のほどは不明だが、初めての経験でやる気をなくしたのかもしれない。
:「勝負所でペースが上がる時についていけない。ゴーサイン出してから一瞬に反応できない。でも背中がいい馬で絶対良くなるから期待していてください」(大塚騎手談:競馬ブックより引用)
このコメントに希望を込めて秋競馬に飛躍を期待しよう。
よし!次は中山だ!