友人の結婚式に出席するため1年ぶりに訪れた北海道。結婚式は十勝で行われる。少ない時間を有効に使いたいという理由でジェット&レンタカーでの優雅な観光となった。毎年馬に会うため日高地方をうろうろするだけの北海道旅行であるが、今年は結婚式で十勝もコースに加わった。とはいえ愛馬の生産牧場である門別の新井昭二さんの牧場と種牡馬を見て回るのが毎年の恒例である。
この時期ほとんどの牝馬は種付けを終わっているが、人から牝馬や当歳馬に病原菌がうつるのがこわいので、どの牧場も馬を部外者に触れさせたくないのが実状。牝馬はまず見学禁止と心得た方がよい。一般の人は遠くから種牡馬を見せてもらう程度で満足するべきである(もちろん見学の心得はわきまえた上で)。
千歳空港でレンタカーを借りて一路門別へ。と行きたいところだが空港でレンタカーに乗り替えたのが午後2時。今日は苫小牧泊の予定を入れてある。若干時間があるので途中のノーザンホースパークに寄ってみる。ここは初めての場所だがグリーンチャンネルで番組の合間に流すビデオを、よく見ているので初めての気がしない。木々の合間を馬に乗って闊歩するシーンを思い出す。
苫小牧から門別の新井昭二さんの牧場までは1時間ちょっとで到着だ。ところがその前に寄るところがある。途中の鵡川にある中島進さんの牧場である。ここには愛馬マイヨジョーヌの全姉が繁殖牝馬として繋養されている。アングロアラブで競走馬名は「ドラゴンエフ」、金沢競馬場で7戦7勝の女傑だったそうだ。これがまた栗毛と鹿毛の違いはあっても、我が愛馬と顔かたち、性格そっくりなのである。もちろん、マイヨジョーヌもドラゴンエフも新井昭二さんの生産である。
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ドラゴンエフ | マイヨジョーヌ |
中島さんの牧場は半農で、わずか5頭の牝馬で細々と経営されている。馬主として旭川で自分の馬を走らせているそうだ。中島さんは、「売れないから自分で馬持って競走させてんだぁ。牧場やっても儲からねぇし。趣味でやってんだよ」と高らかに笑うのである。ひとしきりドラゴンエフと当歳達にニンジンとリンゴで遊んでもらった後、中島さんの「ほんとに馬が好きだねえ。ドラゴンはうちの宝だからアラブの競走が有る限りは手放す気はないよ」という毎度の言葉に安心して牧場を後にする。アングロアラブのおかれる環境は決して穏やかでないので一抹の不安がないことはないのだが。
いよいよ新井昭二牧場の訪問である。昨年は9月だったので約10ヶ月ぶりの牧場訪問である。豊郷中心地を抜け、国道235号から左に折れて豊郷の奥へと約5分車を走らせる。入り口にビワハヤヒデの日西牧場があるのですぐに分かる。いまや通い慣れた道である。新井牧場は本場と分場の2ヶ所に厩舎が有り、隣接して放牧地が数面ある。新井さんと娘婿の水正さん夫妻の3人が、主に馬の世話をされている。もちろん新井さんの奥様もご健在である。
まずは分場へ。今年は牝馬と当歳、2歳馬が放牧されている。先週の土曜日にリュウパープルが函館で未勝利勝ちを納めたばかりなので、まずはそのお祝いから。皆さんほんとうに喜んでおられた。スーパークリーク産駒なので今後をさらに期待したいところである。もう1頭の美浦入厩馬ブレイクショットも早く勝ってくれればよいのだが...牧場では備え付けの黒板に、最近勝った馬の名前を書いてお祝いをしている。もちろん、その日はリュウパープルの字が躍っていた。しかしふと、その黒板を良く見ると、なにやら「ブルボン3勝」と書いてある。
:「これは?なんの馬ですか?」
:「ああ、これはミヤシロブルボンです。水沢で3連勝したんですよ。父ミホノブルボン、母ミヤシロオープン。今度新潟のダリア賞に出る予定ですから応援してくださいね。ミホノブルボン産駒の期待の1番星ですよ」
:「えっ!そうなんですか^^;。がんばって欲しいですね。是非応援しますよ」
思えば、これが始まりだった。不覚にもそんな馬がいるとはそれまで全然知らなかった。去年牧場を訪れたときにはもう育成牧場に入っていてミヤシロブルボンは新井牧場には居なかったとのこと。
:「ダリア賞に勝てば新潟3歳ステークスに出られるのですよ」
:「そ、そうですか。勝ってくれるといいですね」
いまだに、新井さんの馬が勝った時の口取り写真を撮ったことがない私は、どうしても口取り写真を撮りたいという願望が込み上げると同時に、その時の光景を想像してニンマリするのだった。
よし!応援するぞ!
新潟競馬場には行ったことがない。「お盆だし、新幹線で行っても人が多くて時間がかかるだろうな。どこで応援しても一緒だよね」と勝手に決めてしまいテレビ観戦となった。でも、「せっかくだから形に残る名前入りの馬券を買いたい」。PATを持っていても、つい馬券を買いに行ってしまうのだ。これはやっぱり中山競馬場がすぐ近くにあるのが原因だな。でもこの時期中山では馬券を売っていないので不便この上ない。「しょうがないから、WINSに行ってWINSで観戦としよう」と決心して、WINS銀座へと出かけるのであった。
WINS銀座は狭い。やっぱり後楽園にすればよかったかなと後悔しながらダリア賞まで待機である。他のレースは買わないのだ。1日1〜3レースしか買わない主義である。たくさんやってもロクなことがないことが身に染みている。ダリア賞は第9レースである。
今日の出走メンバー
馬番 馬 名 斥 人 騎 手 体重 所属 1 マルハチラグビー 53 7 小国 458 上山 2 ワンモアヒット 53 5 五十嵐 462 新潟 3 トニノネプチューン 53 4 見沢 432 浦和 4 ハロードーリー 53 2 小野 410 美浦南 取消 キタノジェント 53 大塚 美浦南 6 タマルファイター 53 6 斉藤誠 518 高崎 7 テツノドーベル 53 8 榎 408 新潟 8 ミヤシロブルボン 53 3 菅原勲 450 水沢 9 タヤスアゲイン 53 1 柴田善 464 栗東 (芝1200m 天候:晴れ 馬場:良)
:「1番人気はタヤスアゲインか(鞍上、柴田善)。ミヤシロブルボンは3番人気。まあ、美浦で馬に乗る技術では一目おかれている(乗馬関係者からの伝聞ですのであしからず)柴田善騎手とはいえ、レースになるといろいろ不確定要素があるから、つけ入る隙はあるな。ミヤシロブルボンは初芝というところが気になるけど、ミホノブルボン産駒だから大丈〜夫だろう。しかし、9頭立て(1頭取り消して8頭立て)の6頭が地方馬とは、すごいな。地方馬ではブルボンが1番だろうね」
かなり我田引水のところがあるが、結局ミヤシロブルボンから買うのは初めから決まっている。パドックでも悪くない印象だし、かなりの自信を持った。パドックを見ていて他に気になったのはタマルファイターだけ。結局ミヤシロブルボンの単、複と、ミヤシロブルボンからタヤスアゲインと、タマルファイターへ。私は本命サイドへは薄めに掛け金を取り返す程度買い、穴ねらいは厚めに買うのがスタイルなので、タマルファイターへは厚めに買った。
いよいよスタートである。タヤスアゲインが逃げて、3頭が先行したすぐ後ろ4番手をミヤシロブルボンとタマルファイターが追いかける展開。悪くない位置取りである。4コーナーを回ってタヤスアゲイン先頭を、タマルファイターとミヤシロブルボンが合わせ馬の形で追いすがる。この時一瞬、ミヤシロブルボン−タマルファイターの万馬券が頭に浮かんで私の心臓は張り裂けんばかりであった。しかし、追いすがっても追いすがっても、タヤスアゲインの足色は衰えない。わずかタマルファイターが抜け出してタヤスアゲインに追いついたところがゴールであった。結局1/2馬身届かず3着、前の2頭が1着同着。タマルファイターとタヤスアゲインが新潟3歳ステークスの出走権を得たのであった。
:「やっぱり初芝が影響したのかな。でも、芝でも結構やれるんじゃないかな。しかし中央の壁は厚いなあ...」(私)
:「初芝でテンに行けなかった。直線は合わせ馬の形でよく伸びてくれた。もう少し器用さが出てくればね」(菅原勲騎手談:「週間競馬ブック」より引用)
新潟3歳Sに出るという所期の目的は達成できなかったが、今後は岩手で精いっぱい活躍して欲しいと祈るばかりであった。以来ミヤシロブルボンのことは頭の片隅に追いやられ、遠くから応援するのみであった。